生成AIと著作権:企業が押さえるべきリスクと対策

生成AI×著作権 — AI回路と©マークのイメージ

「生成AIで作った画像をSNSに投稿したら、クリエイターから警告が来た」「AI生成した文章が、他社の記事と酷似していると指摘された」——こうしたトラブルは、もはや他人事ではありません。

生成AIを業務に活用する企業が急増する一方で、著作権をめぐるリスクも現実化しています。2025年には、CODAなど100社以上が加盟する団体がOpenAIに対して要望書を提出し、日本コンテンツの無断学習に抗議する事態にまで発展しました。

重要なのは、著作権侵害の責任を負うのはAIの開発会社ではなく、生成物を利用した企業・担当者自身になり得るという点です。

この記事では、生成AIの著作権リスクについて、企業の担当者が知っておくべきポイントを整理します。


1. 「学習段階」と「利用段階」を分けて理解する

学習段階と利用段階 — 分岐する2つの矢印のイメージ

生成AIと著作権の問題を考える際に最も重要なのが、2つの段階を区別することです。

学習段階(AIが著作物を読み込む段階): 日本の著作権法第30条の4では、AIの学習目的での著作物の利用は、著作物の「享受」(鑑賞・体験)を目的としない限り、原則として権利者の許諾なく行うことが認められています。ただし、海賊版サイトからデータを収集する場合や、特定のクリエイターの作品を集中的に学習させる場合は、この例外が適用されない可能性があります。

利用段階(生成物をビジネスで使う段階): こちらには特別な免除規定はありません。AIが生成したコンテンツであっても、既存の著作物に似ていれば、人間が作った場合とまったく同じ基準で著作権侵害が判断されます。

つまり、「AIが作ったものだから著作権侵害にならない」という考えは誤りです。


2. 著作権侵害が成立する2つの要件

類似性と依拠性 — 天秤のイメージ

生成AIの出力が著作権侵害と判断されるには、「類似性」と「依拠性」の2つの要件を満たす必要があります(文化庁「AIと著作権に関する考え方について」2024年)。

類似性: 生成物が既存の著作物と同一または類似していること。ただし、「作風」や「アイデア」が似ているだけでは該当しません。具体的な表現の類似が問われます。

依拠性: 既存の著作物を元にして作られたこと。ここにAI特有の落とし穴があります。利用者が元の著作物を知らなくても、AIがその著作物を学習データとして読み込んでいれば、「AIを通じた間接的な依拠」が認められるリスクがあります。

つまり、意図せず著作権侵害になってしまう可能性があるのです。


3. 国内外で起きている実際のトラブル事例

トラブル事例 — 警告マークとドキュメントのイメージ

生成AIに関する著作権トラブルは、すでに国内外で多数発生しています。

海上保安庁のパンフレット問題(2024年): AI生成イラストが特定のイラストレーターの画風に酷似しているとSNSで批判を浴び、パンフレットの公開が中止されました。法的に著作権侵害と認定されたわけではありませんが、企業の評判を大きく損なうリスクを示す事例です。

ニューヨーク・タイムズ等によるOpenAI訴訟(2024年〜): 米国の複数の報道機関がOpenAIを提訴。記事が無断で学習に使用されたと主張しています。2025年11月には、裁判所がOpenAIに2,000万件のチャットログ開示を命じるなど、大規模訴訟に発展しています。

CODA・日本動画協会の共同声明(2025年): 100社以上が加盟するCODAと出版社19団体が、OpenAIのSoraによる日本コンテンツの無断学習に抗議する声明を発表しました。

これらの事例は、生成AIの著作権問題が「将来の懸念」ではなく「現在進行形のリスク」であることを示しています。


4. 企業が取るべきリスク管理のポイント

リスク管理 — チェックリストとシールドのイメージ

生成AIの著作権リスクは、正しく理解し管理すればコントロールできます。「全面禁止」にするのではなく、適切なルールのもとで活用することが重要です。

社内ガイドラインの整備: 生成AIの利用範囲・承認フロー・禁止事項を明文化する。特に、生成物を外部公開する前に必ず人の目でチェックする体制が重要です。

AIツールの選定基準: 学習データが権利的にクリーンであることを公表しているツールを選ぶ。利用規約を確認し、入力データがAIの再学習に使われない設定(オプトアウト)が可能かを確認する。

生成物の類似チェック: 有名な著作物やキャラクターに類似していないかを、公開前に確認する。画像の場合はGoogle画像検索での逆引き検索が簡易的なチェック方法として有効です。

記録の保持: どのAIツールで、どのようなプロンプトを入力して、いつ生成したかの記録を残す。トラブル発生時の対応に不可欠です。


5. コンテンツIPを持つ企業が特に注意すべきこと

コンテンツIP×AI — 盾の中にフィルムリールとAI回路のイメージ

アニメ・マンガ・ゲームなどのコンテンツIPを保有する企業は、生成AIの問題を「利用者」と「権利者」の両面から考える必要があります。

利用者としてのリスク: 自社のマーケティング素材やプレゼン資料にAI生成コンテンツを使う際、他者の著作権を侵害するリスク。

権利者としてのリスク: 自社のキャラクターや作品が、第三者によってAIの学習データに無断で使用されるリスク。自社IPに類似したAI生成物が市場に出回るリスク。

コンテンツIPの保護という観点では、著作権登録や商標登録による権利の明確化と、AI生成物の監視体制の構築が今後ますます重要になります。


まとめ

  • 生成AIの著作権問題は「学習段階」と「利用段階」を分けて理解することが基本
  • 利用者が元の著作物を知らなくても、AIを通じた間接的な依拠が認められるリスクがある
  • 社内ガイドラインの整備、AIツールの選定、生成物の事前チェック体制が企業のリスク管理の鍵

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本記事は知的財産に関する一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。具体的な権利の登録・出願・法的手続きについては、各分野の専門家にご相談ください。

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